第5回:激変

Market Report Vol.05

市場の展望-第5回

 かつらの販売を担う一経営者として、業界の「過去の経緯」「現在の状態」「これからの市場の展望」 について、私自身の抱く希望や危機感も含めて、思うところを徒然に書いてみたいと思います。
これは、社長の思いであり、我が社の経営環境、経営理念、経営目標の再確認でもあります。

代表取締役 島田広夫

激変

 前号ではなにげない予感から世界経済の予期せぬ出来事が起こればと書きましたが その通りになってしまいました。 最悪の場合マーケットサイズが60%まで落ち込むかもしれません。

 まさかこれほどにひどい状況になるとは誰も予測できなかったことが起きたわけですが、 このような情勢が年内続くとすれば、人々の経済の疲弊はもちろんのことですが、 精神面でも高齢者にとっては様々な障害も併発し、男性かつらの販売に影響を及ぼし 始めています。
現実に当社において、年明け後、受注した製品が完成し連絡をしたところ、リストラに 会い支払が難しいとの事。
また、30代のお客様もリストラ後、軽いうつ病にかかり、かつらの使用を止めてしま いました。
我々かつら業界への影響は想像すらつきません。

 また、日本の景気対策のため多くの補助金や財政出動、いろいろな減税。
世界中の国々が10兆円、70兆円、1000億ドルとか景気対策として予算を組んで いるようですが、もし世界のマーケットが落ち着き始めたらどうなるのか、石油も金も 鉄鋼もレアメタルも高騰するかもしれません。
 地球がお金の津波に襲われたら、その反動、リバウンドはどんな形で現れるのでしょうか。

 さて、身近な出来事ですが、当社はこの2月に車を買い換えましたが、価格200万円の 車種が40万円の値引きでした。 自動車産業界はデフレ状態ですが在庫整理がすすみ、海外自動車産業を含め再編の目途が ついた時、価格は戻ることがあるでしょうか。
いちど値下げとか安売りキャンペーンを打ち、ご購入のお客様には、なかなか値上げは 難しいのではないでしょうか。 新製品による値上げにしても男性かつら製品では機能は限られているため、新機能、新製品 の開発は大変なことです。

 スーパー各社も20%もの値下げ攻勢、あのニトリの値下げ効果に刺激をうけたのだと 思います。さらに、あのユニクロの新製品のヒットも見逃せません。 当然、この時期に販売ということは、その以前の早くからの企画、開発だったはずです。 細分化され、新しい発想とデザインと高機能との組み合わせ、高品質製品の開発、絞り 込まれたターゲット、徹底した店舗見直し(スクラップ)、独自店舗にこだわらない出店戦略、 等々。
 困難な状況に陥った時ほど、日々の努力が生きてくると大変勉強になります。

新しいビジネスモデル

さて、今までの古い知識や、経験と思い込みを外し。次のことを改めて考えてみたいと 思います。

 ①安い価格とは ②かつらの高機能とは ③かつらの高品質とは ④新鮮な発想とは ⑤ターゲットは
 ⑥毎年、売上増には

課題

重要成功要因

 ①安い価格とは?  ・子供が親にプレゼントできる価格。
 ・3~5万円。
 ・月々5千円で買える。

 ②高機能とは?  ・自然なはえぎわ
 ・風に強い
 ・簡単で強い接着力
 ・簡単装着方法。

 ③高品質とは?  ・丈夫で3~5年使用可。

 ④新鮮な発想とは?  ・今日、付けて帰れる。
 ・明日、まにあう。
 ・短納期。
 ・技術者不要、素人でも開業できる。
 ・製品が目に見える路面店。

 ⑤ターゲットは?  ・40歳以上。男女。

 ⑥毎年、売上増には?  ・大都市圏、中都市圏に1店舗。
 ・インターネット販売の充実。
 ・自宅まで訪問販売。

その他、詳細なことは次回あらためて書くことにします。 以上、いままで書き綴ったことは、私自信が体験、及び同業他社に勤務している人たちや、 他社を退職後、当社に入社し、色々と聞いたことを手短かにまとめたものです。
もっと、この業界に詳しい諸先輩方もたくさんいらっしゃると思いますが、 なかなか個人では表現は難しいことがあるかと思います。

人工毛

 過去には多くの出来事がありましたが、かつら歴史で大きな転換点がありました。
それは、日本国内で初めて人工毛かつらが発売されたことです。

 かつらには必ずベースがあり、その上に髪の毛を一本または複数本ずつ植え付けて、 作られていきます。
そのベースは、多少の違いはあれ基本的にネット状のベースの網目に人毛を結びつけたものと想像してください。 そのベースをお客さまの頭の丸みに合わせ、希望の毛量を植毛します。 そして最後に技術者が長さなどをカットをして仕上げる。基本的にはこれだけです。

 およそ30年前の1980年ごろ、大阪を拠点にする(株)ポアル・シェードユーブルが日本で初めて人工毛かつら製品を売り出しました。日本の国内では、それまでは男性かつらは全て人毛が使用されてきました。
 また、理容技術者のあいだでも人毛が良いとの思い込みから、なかなか人工毛かつらに移行が出来なかったようです。ただ、海外では早くから男女用かつらとして、人工毛で製品が製作されていました。
人工毛は、人毛とは全く正反対の性質を持っていました。

その特徴は
 1、変色しない。
 2、もつれない。
 3、パーマ処理がいらない。
 4、難しいレザーカットが不用。
 5、あらゆるカラー(毛色)に対応が可能
です。
 将来、理容師が必要なくなるかもしれないと感じました。当社が計画している企画の元になっています。
(普通一般の人が5~10回程度の講習を受けて、かつらの販売ショップの経営者になれる。)

 その後、アートネイチャーが人工毛かつらを売り出したのは確か3~4年後だったように記憶しています。
当時、人工毛はアクリル製でカネカロンと呼ばれて、女性専用かつらの、世界中のトイザラスの人形用毛髪として使用されていたと聞きました。あるカネカの人からお聞きしたことですが、当時、カネカでは製造量に対し使用量が追い付かずに人工毛髪を大量に廃棄処分をしていたそうです。
 その後、フォンテーヌはアデランスに吸収されました。

 現在ではポリエステル製の人工毛髪も開発され、形状記憶毛髪とか呼ばれ耐熱性毛髪として知られています。
もちろん、それぞれに短所、長所がありますが、今では、かつらの主流は人工毛髪です。

 しかし男性かつらに求められる品質とは、自然とか不自然は技術者個人の技術力と生まれ持ったセンスに委ねることになります。すなわち、技術者の日々の研鑽と個人の生まれ持った美に対する程度(センス)を、どこまで引き上げることが可能なのか。そのような高い技術力とハイセンスの持ち合わせる、個人技術者を多数確保できるかどうかは永遠の課題です。

 当社はその人材育成に時間と費用をかけてために多少、会社の成長という意味では遅れたかもしれませんが、人材という点では、どこにも負けないと自負しております。

かつら市場の2極化

1.低価各販売はインターネット販売業者

 理容関係者でもなくかつら専門店関係者でもなく一般の比較的小人数の、なんでも扱う ネット通販会社が、ついでにという感じで扱って、意外に売れているようです。
製品は主に女性用パーティグッズとして価格帯は5000~12000円程度。
男性用も一応取り扱う。これで、かつらの年商5~6000万円位は上がっているようです。

 また、オーダー専門を売りにするネット通販会社では、ご注文、お問合せのお客様を もよりの一般の理美容店に型取りや納品依頼をしているようです。販売価格は12万円~16万円。
(手数料として20%~30%を支払っているようです)

2.中、高価格帯販売の専門ショップ販売。

 もどかしくも、悩ましい立場にありますのが専門ショップです。
これまでは困ったときには販売単価を上げるという安易な方法で、なんとかやって 来られましたが現在の社会環境、情勢では値上げもままならないと思います。

 さて、いままで書き綴ったことは、私自信が体験、及び同業他社に勤務している人たちや、 他社を退職後、当社に入社し、色々と聞いたことを手短かにまとめたものです。 もっと、この業界に詳しい諸先輩方もたくさんいらっしゃると思いますが、なかなか個人では 表現は難しいことがあるかと思います。

2009.10.9 つづく